「ハルもジョシュアもベルも、みんな行っちゃうなんてつまんない!」
グロリアが駄々をこねる。
「おいおい、そもそも僕らを強引にここに連れてきたのは君でしょう。ちゃんとおうちに送り届けたんだからいいじゃないか」
「だってベルまで連れて行っちゃうなんて思わなかったんだもん。ベルがいなかったらどこにも遊びに行けないじゃないよ」
「また来るわ、可愛いリトル・グロリア。きっといつか会えるわよ」
ベルナデッタはまるでグロリアの姉か何かのように優しくハグした。
「ラーンスロット卿、よければサインをいただけませんか?」
ヘイゼルがラーンスロットにメモ帳を差し出す。ヘイゼルはいちいち状況が把握できずにうろたえているようでいて、なかなかどうして抜け目がない。単に言動が大袈裟なだけなのかもしれない。
ロボ・ビビ151型の故障がなんとか直ったので、ハル、ジョシュア、ヘイゼルの三人とベルナデッタは、ロボ・ビビ151型で共に未来へ旅立つことになった。
「私たちは君を送り届けたら、一旦もとの時代に帰ろうと思うが、ひとりで大丈夫か?」
「ええ。未来に行きさえすれば、ビビの足りない部品なり調達できると思うから、心配しなくていいわ。なんとかなるわよ」
ベルナデッタは朗らかに笑う。一人であちこち時間旅行しているだけあり、だいぶタフな女性らしい。
「三千年か……途方もないな。すぐ発つのか?」
「そうね。このあたりはコーンウォールになるのだけど、ロンドンに戻るにしても、未来のほうがいい交通手段があると思うのよね……カラスに乗るよりは」
「そのカラスにこれまでだいぶ助けられてきたんだけどね。でも丸一日かけてロンドンに戻るのは、ちょっと疲れるかな」
そう言いながらジョシュアは、ロッドとリリーも一緒に連れて帰らなければならないことを思い出した。ロッドとリリーは森に餌を探しに行っているようだった。
城は外界から閉ざされて、森の中に埋もれるように佇んでいた。コスモスワールドに帰れたら、ここに戻って来ることはないのだろうか。
もう来られないと思うと寂しい気がするから不思議なものだ、とジョシュアは思った。
ロボ・ビビ151型は小型のロボットだが、時間旅行するにあたって小さな球形に近い乗り物に変形した。四人がぎりぎりそれに乗り込み、ベルナデッタが行き先の時間を指定する。
「ではビビ、新宇宙暦元年にお願い」
「イエス、ドクター・ベルナデッタ」
ビビがかわいらしい声で返事をすると、球体はふわりと地面を離れ、やがて空中で光に包まれて消えた。