第三章 中世の呪われた古城と魔女の使い魔<7>

第三章 中世の呪われた古城と魔女の使い魔<7>

「今度は未来だって?それも三千年後?」

 城の一郭には礼拝堂がある。石造りの高い天井にヘイゼルの大声が反響して、ジョシュアは咄嗟に耳を押さえた。

 高い窓にはめ込まれたステンドグラスが色とりどりの光を投げかけている。

 ベルナデッタ救出の日から丸一日が経っていた。ベルナデッタは昨夜から自室で故障したロボ・ビビ151型を修理していたが、どうやら部品がいくつか足りないらしい。

「しかしあんたが未来から来たとはね。あの屋敷を買うんだからどんな貴族様か、はたまた成金ブルジョワかと思っていたが」

「残念ながらどちらでもなかったな。命を助けてやったんだ、新聞には書くなよ」

「わかったわかった。でもまだ帰らないんだろう?」

「ああ、カオスワールドとコスモスワールドの分岐点に行って、元の世界へ戻る」

「それはつまり三千年後の人たちを古代へ時間旅行させないということ?」

 ジョシュアが訊くと、ハルは頷いた。

「しかしそれじゃ、未来の人間たちは滅びてしまうんじゃないのか。そんなことをやすやすと受け容れるのか?」

 ヘイゼルが言う。

「難しいだろうな」

 ハルは小声になった。

「だがそれは我々の仕事ではない。私たちはベルナデッタを未来に連れて行くだけだ。未来を変えるのは彼女の仕事だ。彼女が未来に行きさえすれば、その作用でコスモスワールドは戻ってくる……」

 ジョシュアは曖昧に語尾を濁したハルをまじまじと見つめる。

「……多分」

 ハルはばつが悪そうに付け足した。

「……まあ、そうだよね。でもこのままここで呪いが解けるまで六百年過ごすのもいやだし、元のロンドンに戻る方法は他に思いつかないし、仕方ないか」

 ジョシュアはシャーロットやジャックを懐かしく思い出していた。二人はまだ時間迷宮の館で待っているのか。ポーリーンはどうしているだろう。戻ったら会いに行きたい。この冒険の旅の物語を話して聞かせたい。

「なんだジョシュア、あんなに時間旅行したがっていたのに、未来には興味が無いか」

「興味が無いわけじゃないさ。ただ……」

 ジョシュアは礼拝堂の長い椅子に座って祭壇を見上げた。

「僕は昔、イスラエルの時間屋で五分間の時間旅行をした。僕が今いる世界は、五分前の世界の続きなのか、それとも五分前とは違う世界を生きているのか、時々不安になってね。……まあでも、結局好奇心が勝ってこうして時間旅行してしまっているわけだけど」

 ジョシュアは懐中時計を取り出した。きっちり五分遅れている時計は、その旅の証だ。

 ハルは無言で隣に座ると、ジョシュアの肩に片手を置いた。


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