カナディアン・クラブと仙台の夜

カナディアン・クラブと仙台の夜

 ウィスキーを初めておいしいと思ったのがこのお酒。

 私のウィスキーとの出会いは、学生時代に遡る。仙台の国分町の隣に立町というエリアがあって、まぁなんというか国分町で飲んだ後に訪れる町なのだが、当時はいわゆるラブホテルや場末の風俗やラーメン屋や、あるいはそんな元気も金もない輩が時間だけを潰しに行くスナックなんかがあった。

 そのはずれに学生バイトが1〜2人で回す小さな小さな店が、バーと呼ぶのもおこがましいですがといった風情で小さな看板を出していた。バーテンはたいてい大学の3年か4年の学生バイトで、客はその友人や後輩やOBといった顔見知りだ。話題も、試験や論文、サークル内の噂話などを飽きずに夜通し話していた。

 金のない学生どもの飲む酒のこと、コスパのいい酒が重宝される。濃くて、酔えて、安い。バックバーにはボトルキープされたワイルドターキーやフォアローゼスが並んでいた。大人になれば一晩で軽く使い切るような金額のボトルを、大事に大事に飲んでいた。今思えばかわいらしい。それでも半分くらいは大人になった気分でいたものだ。

 しかしそのワイルドターキーもフォアローゼスも、どうにもきつくて飲めない。といって甘いカクテルはすぐにグラスが空いて、どうにも財布に優しくない。何かないのか、とバックバーを眺め回す。

 その日のバーテンは同じ学部の同級生だった。彼は、歳も同じかひとつ上なのに、大人びていて、どこか達観した雰囲気を持っていた。他に客はいなくて、店は暇だった。だからわがままも言いやすかった。

 バーボンは臭くて飲めん、強くて飲みやすくて甘くない(そして安い)何かないか、と言ってみたら、彼は「うーん」と言ってから、「CCなんか飲みやすいよ」と勧めてくれたのだ。

 CCというのはカナディアン・クラブの略称だと教えてくれた。カナダのウィスキーだと。そのまんまだ。聞かなくったって名前でわかる。そう言って笑い合っただろうか。もう忘れた。

 しかし味は覚えている。すっきりしていて、いくらでも飲めそうだった。バーボンと同じとうもろこしやライ麦が原料とは思えない。ロックでゆっくり飲んで、だんだん薄くなってもしっかりお酒の味がして、これはいいやと思った。

 夜は静かに更けていった。一人暮らしの部屋に帰って眠るだけだと思うと、夜はつまらなく長く感じるものだ。だからなんとなく飲み続けてしまう。三時の閉店時間を少し回ってから、店を出た。彼はそのまま店じまいして、私のアパートとは逆の方向に帰っていった。

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